長野への旅

今回はめずらしく”ひとり旅”ではなく、30年来の友人との”女ふたり旅”でした。

私は一時期、憑かれたように長野に通っていた時期がありました。かれこれ35年ほど前のことです。私には元来、ある「地」に憑かれるというちょっと不思議な習性があって、そういう気持ちになるともう矢も楯もたまらず、そこに行かなければ気がすまなくなるのです。

つまり、「あ、あそこへ行きたい」というそれだけの思いなのですが、今、「あそこ」という方角が私をうごかすのです。長野はそういう土地でした。

長野県下のロードマップは東京より詳しいくらい。夜中、子供を寝かせてから車をとばす・・・。今思っても、よくあんなエネルギーがあったなと思うほどです。車と私はひとつになって山野を駆けめぐるのでした。林道、農道、さまざまな小経にも分け入り、走り続けた時期。

追分から一気に上田へ抜けてしまう国道の、その裏道に1000メートル林道があります。埃だらけの道をぐんぐん走ると、視界が変わっていきます。そこで、出会った畑の奥のほうに建つ家の様子・・・。すべてが、ヨーロッパの田舎を思わせるのです。

その家の主、村田ユリさんとの出会いはこうしてはじまりました。今は亡きおばさま。後にその方は知る人ぞ知る植物の研究家であり、マスコミにはお出にならないけど、いろいろな方から慕われている大変な方だと知りました。

見ず知らずの私を手を広げ迎えいれてくださいました。あるとき、疲れ果てて夜遅く10時頃に村田さんの家に着いたことがあります。そのときユリさんは、ご自分の庭で採れたハーブを木綿の袋につめ、それをお風呂に入れて「気持ちいいわよ。お入りなさい」とすすめてくれました。

ベットに入ると枕の下には、さっきと違う種類のハーブがしのばせてありました。緊張がとけて、寂しさがこみ上げて、でも幸せな気分で、その香りの醸し出す優しさに、私は打たれ、眠りにつきました。

女性が仕事や、家庭、子供・・・それぞれに全力投球してもなにか、虚しい・・・どうすることもできないこと。自分がどうしようもなくなったとき、”一晩でもいいから、あの香りに身を置かせてほしい・・・”と願った時代です。

そんなある日、ご近所に住む玉村豊男さんご夫妻と知り合いました。玉村さんが腕を奮ってくださった料理をいただく機会にも恵まれました。

ユリさんは昼間はほとんどの時間を、長靴をはいてシャツと作業着で、畑で過ごします。その先の畑で出逢ったのが、現在は上田から近い東御市で”ヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイナリー”でレストランと、そして何よりも美しいガーデンを造った玉村夫人の抄恵子さんなのです。

エッセイストで画家の豊男さん。東御市でワイン用ぶどうの栽培をはじめたのは1992年。試行錯誤しながらもワイン造りの夢を実現しました。今や国産ワインコンクールで連続受賞し、高い評価を得る実力派ワイナリです。

遠く北アルプスを望む標高850mの南斜面には、メルローやシャルドネなど15000本を越える葡萄の木が植えられています。

私も74歳になり、少し大人になりました。孤独って素敵なこと・・・と思えるようにもなりました。今まで両手に抱えていたものを、少しずつ手放し、心が自由になりました。”玉村さんご夫妻にお逢いしたい”との思いで長野の旅にでかけました。

まずは、小田原から東京、そして新幹線を乗り換え上田まで。しなの鉄道に乗り換え「田中駅」に。駅には「農の家」のご主人が迎えにきてくださいました。

今回の宿泊は玉村夫人のご推薦の宿です。東には軽井沢、西には上田市、北へ行くと長野市。「農の家」の建物は江戸時代に建築され、建物の周りの石垣は亀甲形で、作られています。

その農家を4年ほどかけご自分たちでリノベーションし、素敵な宿泊施設に生まれ変わりました。骨格は大工さん。床板張り、壁の漆喰塗り、木部の柿渋塗り、露天風呂など・・・ご自分達でされたそうです。

素晴らしくセンスがいいのです。一日一組。畑を借りて農作物を作り、お食事は野菜やフルーツはほぼ自給し、畑は原則耕起せず、農薬は一切使用していません。カジュアル・フレンチ。美味しいのです、なにもかもが。

なによりもご夫妻のお人柄がすてきです。”何もしない時間・空間”は最高の贅沢です。薪で焚いてくれた露天五右衛門風呂のなんと贅沢なことか。(詳しくは「農の家」でネットでお調べください。)お薦めの宿です。夕食・朝の散歩と朝食。満たされてヴィラデストに行く前に近くの北国街道海野宿(うんのじゅく)へ。

江戸時代・北国街道の宿場町として栄えた城下町。延長650m、幅10mの両側には、旅籠屋造り、茅葺屋根など歴史的な建物が残っています。でも・・・なにしろこの猛暑!日陰を歩きましたが、途中ガラス工房のカフェで カキ氷をいただきました。あずきミルクのカキ氷、久しぶりです。

朝顔・風鈴・カキ氷。日本の夏の風物。

そして、一路玉村ご夫妻に会いにヴィラベストへ。ご夫妻とは1年ぶりくらいでしょうか、お目にかかるのは。まだご自宅を建設中からお邪魔させていただいております。多くを語らずとも30数年の友情は変わることなく、お逢いすると、ユリおばさまとご一緒した時代が思い出され、私など胸がキュンとします。

レストランは満席。お客さまはワインを片手にお料理を楽しまれる方や、女性同士楽しげにランチをなさっている方々など、素敵な空間です。

ガーデンの夏の花々と玉村さんご夫妻に見送られ友人と上田へと向かいました。”おんな二人旅”。

自分で自分を抱きしめたいような気持ちで帰路に着きました。
旅はやめられません。
足腰を鍛え、旅を続けたい!・・・としみじみ思った旅でもありました。

「長野への旅」への2件のフィードバック

  1. こんにちは❗
    楽しみな金曜日です🎶
    浜さんのような旅のスタイル、好きです。
    同じところを歩けたら言うこと無いのですが、私なりに心惹かれる空間を求めて出掛け、その地で
    浜さんになったつもりで、散策するのが
    私流✨
    何故か、素敵な女性になった錯覚に浸っています❤
    いつも、素敵な夢を観させてくださって有難うございます。

    1. ☆のかけらさん

      いつもブログお読みいただきありがとうございます。
      そう・・・”旅”って自分流がありますよね。
      私も時々、エッセイなど読み、旅した気分を味わいます。
      私の旅はほんとうに気まま旅、あなたが、そのように感じて旅してくださるのは、とても嬉しいです。
      旅は”賜る”-たぶるー旅とか。
      旅からいただけることの豊かさってありますね。
      それが、たとえ半日の旅であっても。
      これからも素敵な旅をお続けくださいませ。

      浜 美枝

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