「ルドン 秘密の花園」展

ラジオ番組の収録で月に2回は東京に出かけます。

午後1時過ぎには終了するので、その日は待ち通しい、映画・展覧会のひとときです。映画は銀座界隈、展覧会も、東京駅から近い三菱一号館美術館はちょっとした時間に立ち寄れるし、明治期のオフィスビルを復元した建物は落ち着きがあり、小さな展示室が連なっているから疲れませんし、作品との距離も近く、じっくり向き合えるのが嬉しいです。

桜満開から数日たっていたので、葉桜になっていて新緑の眩しい内庭。建物に刻まれた歴史を愉しみながら”さあ~ルドンに逢いにいきましょう”とワクワク気分です。

印象派の画家と同世代でありながら、幻想的な内面世界に目をむけたオディロン・ルドン(1840-1916)。その特異な画業は、今も世界中の人の心を魅了し続けています。

私が始めてルドンの絵を観たのはパリのオルセー美術館だったと記憶しております。衝撃をうけました。「この画家は何を見つめ、何を訴えようとしているのかしら・・・こちらの心の奥を覗かれているようだわ」と思ったのが最初の印象でした。

今回の展覧会は植物に焦点をあてた世界で初めての展覧会とのこと。オルセー美術館、ニューヨーク近代美術館MOMAをはじめとする世界各地の美術館からルドンの作品が集まりました。

ルドンはフランス・ボルドー生まれ。病弱だったため生まれてすぐ、親戚の家に引き取られ、自然豊かな田舎で11歳になるまで育てられました。

その体験は画業に大きな影響を与えます。両親の勧めで建築家を目指しますが受験に失敗。その後、画家を目指しますが遅咲きで、最初の版画集を出版したのは39歳のとき。

40代後半まで木版画や石版画(リトグラフ)など「黒」を基調とした作品を発表します。私はこの時代の作品はとても好きです。40歳で結婚したルドンは、長男を生後半年で亡くしますが、数年後に待望の次男を授かります。それまでの黒一色だった画面は一転し、50代になってから次第に色彩豊かな作品を発表します。

今回の展覧会ではドムシー男爵の城館の食堂を飾った装飾で、三菱一号館所蔵の大きなパステル画『グラン・ブーケ(大きな花束)』、同食堂の15点の壁画など90点あまり。

中でも「目をとじて」(リトグラフ)は、黒から色彩への転換期以降、ルドンの新たな主題でもあります。この作品をどのように解釈するか・・・は観る側に委ねられているように思います。

それが『秘密の花園』なのですね。岐阜県美術館蔵の「目をとじて」(油彩)も素晴らしいです。人間の内面や精神性を描いているルドンの作品を観ていると理性や理論では表現できない・・・心の自由を感じます。

丸の内のオフィス街にひっそり隠れ、四季折々の花が咲く秘密の花園のようなガーデンでワインを一杯!・・・と書きましたが、季節が素晴らしいので外国の方々も、バギーに赤ちゃんを乗せたママなど、大勢の方で賑わっていました。

会期は5月20日まで。
http://mimt.jp/redon/

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