イギリスへの旅

旅の楽しみが、景色や名所旧跡だけを見ることだったら、その楽しみは半分だったのではないでしょうか。”人に逢える”・・・この喜びが加わることによって、旅は2倍も3倍も楽しくなるのです。
今回のイギリスへの旅は、鎌倉でアンティークショップ”フローラル“を営んでいる娘の買い付けに便乗しての旅でした。彼女が仕事の時は、教会や大聖堂に行ったり・・・と自由気ままに過ごしました。13日間のレンタカーの走行距離は1000キロはあったでしょうか。


最初に訪ねた街はロンドンから約100キロの港町・ライ。ここに住む素敵なA夫人にお逢いしたくてロンドンを早朝に出発しました。


今年86歳の夫人は、ライの町で長年大きなアンティークショップを経営し、今はリタイアなさり、素敵な可愛らしいお庭のある家に一人暮しておられます。白髪で細身で背筋がピンと伸びていてとても綺麗な方です。
昼間は庭の花や野菜の手入れ、一人の時間の過ごし方の名人です。ビスケットに紅茶を淹れてくださいました。その人生は背後にある厳しさが背骨になって凛とした美しさがあり、彼女に会うことがイギリス行きの楽しみのひとつです。
1泊してロンドンに戻る途中、今回の旅でどうしても行きたかった街・カンタベリーへと向かいました。

中世の美しい街並が広がる英国最古の巡礼地です。紀元前にこの地域を支配したローマ人が繁栄の礎を築いた街。英国国教会の総本山である宗教都市ではありますが、街行く人々は観光客も多く賑わっています。
荘厳な大聖堂を、ローマ時代に造られた城壁が取り囲みます。聖堂のステンドグラスは12~13世紀のもの。ローマ・カトリック教会から決別して英国国教会を立ち上げたヘンリー8世も登場します。映画「カンタベリー物語」を思い出しながら、中世の街を後にしロンドンへと戻りました。
今度は列車で3時間半南下してトットネスという街に行きました。息子家族に会うために。

夜はオーガニックレストランに連れていってもらいました。オーガニック農場と野菜の宅配の先駆けで有名なRiverfordの農場があり、レストランが併設されおり、採れたての野菜はみずみずしく味も濃厚でした。何もしなくても美味しいのでしょうが、ハーブやビネガー、フルーツなどと一緒に食べると絶妙な美味しさです。知らない人も同じテーブルに着き、大皿でシェアしていただくめずらしいスタイルで、楽しく会話もはずみます。よい家族との再会の夜でした。
その次は、ロンドンから北の街・リンカーンへ。ここでは典型的なイギリスの家を借り4泊しました。


旅での楽しみのひとつはスーパーマーケットでの買い物。自炊ができたので、野菜や牛乳、ヨーグルト、ソーセージ、パンなど買い、朝・昼はサンドイッチを作り、夕食はほとんど自炊ができたので身体のコンデションはとても良かったです。


あ、そうそう近所にあった2年連続全英で2位を受賞した「フィッシュ&チップス」のお店に行きました。夕方はテイクアウトの人々が並びます。私たちは食堂のようなところで食べましたが、今までイギリスで食べた中で一番美味しかったです。


娘は周辺のアンティーク・フェアで買い付け。私も少しだけ買い物をしましたが、世界中から、また国内からの人でとても賑わっていました。イギリス人はほんとうに古いものを大切にし、親から子へ、孫へとアンティークが受け継がれていきますが、年4回はある大きなフェアでよくこれだけモノが動くものだと感心してしまいます。
最後の日だけはちょっと優雅に!と、私がイギリスに行く時には必ず訪れる農園の中にあるレストラン「ピーターシャムナーサリー」へ。


2ケ月前には予約をいれたので昼食は3時の回がとれました。ロンドンから40分たらずのところにありますが、土曜の午後は満席でした。足元は土、室内は秋の花で飾られどんな季節でも美しいのです。旅先ではあまり飲まない白ワインを一杯・・・いえ、ロゼも一杯。
今回も何度も紅茶をいただきましたが、日本ではアフタヌーンティーなど高級な紅茶から、喫茶店で飲む紅茶まで最近は紅茶教室も盛んだそうですね。私は濃いめの紅茶にたっぷりのミルクを入れて飲むのですが、やっぱりイギリスのほうが自分でいれても美味しい・・・。
『牛乳』が違うのですね。ミルクを入れてキャラメル色の紅茶が最高!あちらのスーパーで買う安いティーパックの紅茶でもじゅうぶんに美味しいのです。もちろんポットを温め茶葉。ひと手間かけるのが一番でしょうが。スーパーで棚に並ぶパックの中で、イギリス人の主婦のような女性がサッと買っていらした紅茶をまねして私も買いました。
ロンドンに007の撮影でフラット(アパート)に滞在していたころ、まだ真っ暗な中、撮影所に向かう朝など淋しくなったりもしたのですが、このミルクティーにどれほど慰められたことでしょう。撮影中も10時と3時は必ずティータイム。私たち日本人は貧乏性ですから「あと少し頑張れば、このシーンが終わるのに」などブツブツいいながら紅茶を飲んでおりました。でも何度もイギリスに通ううちに分かりました。「ティータイム」は「コミュニュケーション」の大切な時間であること、仕事でも家庭でも、友人同士でも・・・。
紅茶 おいしくなる話し」の磯淵猛さんのご著書によると「お茶の文化は二つあって、一つは東インド会社から一気に船で渡ったビクトリア王朝時代からの「ティー」の文化で、もう一つはヒマラヤを越えてロシアやサウジアラビアまで渡った「チャイ」の文化です。」とあります。
私は10代のころからインドへ一人旅をよくしていました。夜明けとともに列車がホームに入ると「チャイ・チャイ!」とまだ5・6歳の少年が熱々のヤカンをはだしで持ち、素焼きの小さなカップに入れてくれるのです。5円もしなかったでしょうか。飲み終わると素焼きですから土のホームに投げ、土に戻します。お母さんが鍋か釜で茶葉とお砂糖で煮立たせたのでしょう。ミルクたっぷりの「チャイ」の味は忘れられません。トルコのカッパドキアで早朝、散歩をしていたら、穴からおじいさんが手招きし「チャイ」を飲んでいきなさいと・・・正直冒険です。でも洞窟に入ると鍋でチャイを作ってくれました。欠けた茶碗でミルクがふちにべっとり・・・もう~~美味しかったこと!
この二つの体験で私は「チャイ」が好きになったのでしょうね。もう半世紀も前の思い出です。
ここでも素敵な”出逢い”がありました。
あの幼い少年は中年になり、おじいちゃんは神さまのもとに。
私も74歳になります。
これからあと、どれぐらい旅ができるでしょうか。
ゆっくりと、旅を続けたいとは思います。
いつでも自分をとり戻せるのは”旅”ですから。

「イギリスへの旅」への5件のフィードバック

  1. 秋に親しみたい!ところですが、雨天が続き、今の季節がわからない天候で、折角の美しい日本の秋が駆け足で行ってしまわないよう、願うばかりです。
    今年も、素敵なイギリスの旅に出掛けられてたのですね。
    いつもながら、美しい文章と写真に見入ってしまいました。
    中々イギリスには行けませんので
    せめて、鎌倉のお店に行って、イギリスの風に触れたいものです。

  2. また素敵な旅をされたようですね。
    土地を巡る旅ももちろん素敵。会いたかった人に会える楽しみが加わるともっと旅に意味ができますよね。
    ティーとチャイの歴史。納得です。
    優雅なアフタヌーンティーも大好き。でも
    素朴な陶器に入ったキャラメル色のミルクティーは格別です。カイロまで行くティーにミントの葉がたっぷり入ったシャイがまた美味しいのです。
    紅茶だけで一日中語り合えそうですね。

  3. ☆のかけらさん
    投稿ありがとうございました。
    ほんとうに・・・日本の美しい秋はたっぷり楽しみたいですよね。
    なんとか長雨になりませんように、と祈ります。
    箱根の紅葉も美しく”今年はどこで観ようかしら”
    と楽しみにしております。
    そう、鎌倉もとても美しいです。
    ぜひ、紅葉を観がてら”フローラル”にお立ち寄りください。
    イギリスの香りを感じてくださいませ。
    ばったり、お会いできたりしたら嬉しいですね。
    浜美枝

  4. ブログご覧頂きありがとうございます。
    今回もイギリスの田舎街での散策を堪能いたしましたが、
    教会や大聖堂など歴史を学ぶ旅でもありました。
    なによりも、慎ましい人々の暮らしです。
    これから長い冬の訪れには皆さん女性は、編み物をしたり読書を楽しみます。
    ライのカフェでは隅っこで女性たち6~7名が編み物教室を開き、冬に備えていました。
    カイロでミントの葉がたっぷりの紅茶。
    経験してみたいです。
    寒さが続きます。ご自愛くださいませ。
    浜美枝

  5. 浜 美枝様
    いつも、心温まるお返事有難うございます❗
    鬱陶しい今日の雨模様も吹っ飛びました

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