映画 「甘き人生」

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(画像出典:映画公式サイト
久しぶりに本格的なイタリア映画の傑作を観ました。
監督は今年78歳になるマルコ・ペロッキオ。舞台はトリノ。1969年、裕福な家庭に育った9歳のマッシモは母親の愛情をたっぷり受けて育ちました。ところが、その母親が急死してしまいます。原題は「Fai bei sogni(よい夢を)」
実話にもとづいた近年イタリアでもっとも売れた小説の映画化です。神父が母親は天国にいると伝えても、少年にはその喪失感を受け止めることができません。
時が経ち90年代、ローマ。大人になった少年マッシモは、新聞記者となり、スポーツ記者を経て、サラエボの内戦を取材しますが、帰国後、パニック障害に襲われます。病院に慌てて電話し、それから病院で、精神科医のエリーザと運命的な出会いをします。
それまで人を愛することができなかったマッシモが、この出会いによって次第に心を解き始めます。父親の死、幼い頃の思い出がある家を売ろうとし、過去のトラウマとまた向き合うことになるのです。そして家の荷物を整理していてあるものを発見するのです・・・。
母の謎の死をめぐるミステリー、パニック障害、戦争のトラウマ、過去と現在、60年代から90年代のイタリア。社会の変貌を監督はその背景を見事に演出し、素晴らしい作品です。
それにしても、よく言われるイタリアの男性は大人も子供も「マンモーネ」つまり「お母さん子」。母親と息子の関係性はイタリアの文化であり、この映画の深層心理を知るうえで大変興味深いテーマでもあります。
主演のヴァレリオ・マスタンドレリア(マッシモ)
精神科医のベレニス・ベジョ(エリーザ)
母親のエマニュエル・ドゥヴォス
それぞれが見事な演技です。3人ともこれまで様々な賞を受賞しています。そして、私の関心は映像美です。室内のインテリア、窓外の雪、寺院の陰、川の流れ、それらすべてが物語には必然の見事なシーン。
私がマルコ・ベロッキオ監督の作品を始めて観たのは70年代末の『夜よ、こんにちは』だったと記憶しております。それは赤い旅団のテロと当時の首相モーロ誘拐事件を描いた作品でした。
偶然、モーロ誘拐事件が起きた日、私は一人旅でミラノのドーモ広場の近くに泊まっていました。街中が大騒ぎになり、何が起きたのか、イタリア語の分からない私は英語の通じるホテルに飛び込み事情がわかりました。『荷物をまとめて早く国境を出なさい!』とホテルマンに言われ大急ぎで駅に向かい、夜行列車でスイス経由パリへと脱出したのです。
正面から政治、社会問題を採り上げたこの作品は忘れられません。その監督が78歳にして今回このような映画を撮られるなんて・・・素敵すぎます。
映画の中でも忘れられない言葉・・・セリフ。
母を亡くし心にぽっかり穴のあいた少年に向かって神父がさとします。
『もし(だったら)ではなく、「にもかかわらず」で』と。
監督はイタリア北部の町で生まれ、ミラノの大学では哲学を学んでいて、途中で映画に転向したそうです。
素晴らしい映画を観せていただきました。
有楽町スバル座、渋谷ユーロースペースほかで。
スバル座は8月4日まで。(予定)
映画公式サイト
http://www.amakijinsei.ayapro.ne.jp/

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