映画「光」ひかり

久しぶりに日本映画を観ました。
今年70回目を迎えたカンヌ国際映画祭で”コンベンション部門”に選出され、今やカンヌ映画祭ではなくてはならない存在感をみせる河瀬直美監督が挑んだ映画。
1997年に『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭新人監督賞カメラ・ドールを受賞し、数々の賞を受賞してきた監督の最新作が『光』です。
多少かつては映画の世界に身を置いた経験のある私としては映画ついての感想は簡単には語れません。ひと言、言えることは『河瀬監督”ありがとうございました”』・・・ということ。
視力を失いゆくカメラマンとひとりの若き女性のまさに珠玉のラブストーリーなのですが、美佐子(水崎綾女)は視覚障害者に向けた「映画の音声ガイド」の仕事をし、平凡で単調な生活を送っています。そこで出会った、弱視の天才カメラマン・雅哉(永瀬正敏)との物語です。
これから映画をご覧になる方もいらっしゃるでしょうからストーリーはこれ以上書きませんが、映画を観ていて私は錯覚しました。これって映画?ドキュメンタリー?って。
主役の写真家を演ずる永瀬正敏さんは撮影1ヶ月くらい前から準備をはじめ、(もちろんその前から視覚障害者の方々から教わり、ビデオを観たり、と研究は重ねています)2週間ほど前からロケ地の奈良に入り実際撮影するアパートに住み、主人公の雅哉としての生活をします。彼女もそうだったそうです。撮影もシーン毎に順番に撮っていったそうです。
永瀬さんは語ります。
「僕はありがたいと思います。順撮りで撮影していただき、気持ちの流れをとても大切にしてもらえますし、こういう現場は他にあまりないので、また、役を演じるのではなく、役そのものになって生きられる、そうゆう現場を僕たちの為に必死になって作って頂ける、本当に感謝しかありません。」と。
撮影が終わってからもなかなか社会復帰できなかった・・・。とか。そして「あの現場は確実に”光り輝く爪痕”を残しました。」とも語っておられます。
撮影は『対岸』で第38回(2012度)木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家・百々新(とどあらた)氏。これが劇場用映画デビュー。カメラワーク・光り・構成、なるほど「そうなのね~」と納得しました。とことん光りにこだわったロケ地、セットとなる部屋、「用意、スタート」の掛け声のない現場。。。
河瀬直美監督の映画への深い洞察力、愛情・・・20代でカンヌ映画祭デビュー、そして20年の時を経てカンヌに集まる人々を魅了する理由(わけ)が多少わかりました。視覚障害者の「音声ガイド」というジャンルも私は始めて知りました。劇中映画「その砂の行方」に登場する藤竜也さんも素晴らしい存在感です。
クランクアップは11月14日午後7時半、その日は68年ぶりに月が地球に再接近するエキストラ・スーパームーンの日だったそうです。あの月の『光』も祝福してくれたのですね。
おつかれさまでした。
そして、”ありがとう”
映画公式サイト
http://hikari-movie.com/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です