日本民藝館

仕事帰りに渋谷から京王井の頭線に乗り、駒場にある日本民藝館に行ってまいりました。
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創設80周年特別展『柳宗悦と民藝運動の作家たち』が開催されています。バーナード・リーチ、河井寛次郎、濱田庄司、芹沢銈介、棟方志功、片野元彦、黒田辰秋、金城次郎らの作品が展示され、民藝の美に触発された作家たちの仕事が身近で見られます。中央の部屋のダイニングテーブルに置かれた作品。それぞれの部屋にかざられている作品、どれもが『用の美』そのもの。
中学時代、図書館で出会ったのが柳宗悦さんの本でした。『民藝とは何か』もまったく理解しておらず、民衆が日常的に用いた工芸品の美しさにただただ惹かれていきました。
中学卒業後、女優としての実力も下地のないままに、ただ人形のように大人たちにいわれるまま振舞うしかなかったとき、私は自分の心の拠りどころを確認するかのように、柳宗悦の「民藝紀行」や「手仕事の日本人」をくり返し読みました。
柳さんは、大正末期に興った「民藝運動」の創始者として知られる方です。西洋美術にも造詣の深かった柳さんは、若くして文芸雑誌「白樺」の創刊に携わりましたが、その後、李朝時代の朝鮮陶磁との出会いや、浜田庄司さんや河井寛次郎さんなどとの交流のなかで、.「民衆的工芸」すなわち「民芸」に美の本質を見出していきました。
柳さんは、日常生活で用い「用の目的に誠実である」ことを「民芸」の美の特質と考えました。無名の職人の作る日用品に、民芸品としての新たな価値を発見したのでした。むずかしいことなど当時わかるはずもなく、私が感じる「美しいな~」と感じる風景。たとえば、父の徳利にススキを挿し、脇にはお団子を飾り、家族で楽しんだお月見の夜・・・。ススキを活けた徳利に、月の光があたったときなど、曲面に反射する光りのおもしろさに「わぁ、きれい」・・・と感嘆していました。
地方を旅するとその地方文化の価値が美しいと感じてきたのもやはり「民芸運動」に触発されたからでしょう。
近頃また「民芸」に注目が集まり、日本民藝館の今回の展覧会にも大勢の方が作品に見入っておられました。私はこの40年近くひたすら”なぜ用の美にこれほど惹かれるのか”を考えてきました。今回は民藝館に3時間ほどお邪魔し、椅子に座りながらその空間を楽しみました。柳宗悦は「作家の品と民藝品」でこのように述べています。
「人間はとかく、ものを分別して考えますもので、何事をも二つに厳しく区別して了います。ものを分別して判断する以上、之は避け難いことでありますが、どうして吾々は分けるより、分けないで見る慣わしを、もっと身につけないのでしょうか」と。
濱田庄司も河井寛次郎も『無銘の境地』に心を徹していったのでしょう・・・ということも書かれています。だから署名をしないし、落款もしるさなかったのでしょうね。物事には有名・無名とかの区別ではなく「美しい・・・と感じる心」が大切だということを私は民藝から学びました。
最初にお話し申し上げたように、女優としての不安のさなか「民藝」が私を優しく包みこんでくれました。
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帰りぎわ民藝館の玄関を出ると白木蓮の花が満開でした。そして、わが家へと箱根の山を上がってくると淡雪が漆黒の闇の空を舞っていました。まるで牡丹の花のようでした。
もし「民藝」にご興味のある方は「民藝とは何か」柳宗悦著(講談社学術文庫)が読みやすく入門書になります。
特別展は3月26日(日)まで。
日本民藝館の公式サイト
http://www.mingeikan.or.jp/

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