映画『ホームレス ニューヨークと寝た男』

ニューヨークでファッションモデル兼フォトグラファーとして活動しながら6年間もビルの屋上を寝床にしていたマーク・レイ(当時52歳)。
これはドキュメンタリー映画です。
世界一スタイリィッシュなホームレス、マーク・レイ。彼はストリートスナップの撮影やファッションショーの取材をする傍ら役者業もこなす。若い頃からモデルとして活動してしてきた長身でルックスもよく、チャーミングな彼がなぜ、屋上で寝袋にくるまってホームレス?どうみたってその姿は一見、成功したニューヨークの富裕層にしか見えない・・・。
朝は公園での洗顔、わが家のごとくジムや公衆トイレを活用し、身なりを整える。ジムのコインローカー4つに入れた全財産。家財道具は何一つ持たず、たまには友人たちと素敵なレストランでの食事をとるくらいの余裕はあり・・・かつては「ミッソーニ」のモデルやフランス版ヴォーグ誌にも載ったこともあるマーク・レイ。マンハッタンにアパートを借りたり、家を持とうとはしない。持てない。
そんな彼に元モデル仲間で、オーストリア出身のトーマス・ヴィルテンゾーンはニューヨークで久しぶりにマークと再会し、彼の秘密を知り驚愕したといいます。
3年間ホームレスの彼に密着し、この作品が生まれました。「何でも起り得る街、ニューヨーク」。しかし、このようなストーリーが映画になるなんて私には想像もできませんでした。3年間200時間を超える映像を編集して作られたこの作品は「ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭2014で審査委員賞」「キャツピュール・フイルムフェスティバル2014、ベスト・ドキュメンタリー賞」を受賞します。
映画の中の会話はすべてマーク・レイが発することば。二人は20年以上前、共に男性モデルとしてファッション業界で働いていて輝かしい人生を共に追い求めていて、ニューヨークで再会した時のマークはホームレス。しかも50代前半の彼はまだ見栄えもするルックスで立派な服装(1着だけもっていて)落ちぶれた様子など微塵もなかったそうです。あり得ない話・・・だと監督は思ったそうです。そしてすぐに、彼のニューヨークでの生活をドキュメンタリー映画を撮りたいと思ったそうです。
監督は語ります。
「友人として私を信頼し、自分の物語を世界に紹介してくれたマークにはお礼を言っても言い足りないほどだ。これほどの長期間に渡る冒険を始める時に沸いてくる障害や疑念をすべて捨て去った。まさに冒険だった。キャノンEOS 5D MarkIIと音声レコーダーを持ち、マークと私2人だけで、彼の人生を記録していった」と。
すべて撮り終わってからの編集が素晴らしいのです。監督はこうも語ります。
「私は、マークの個性をこちらが判断したり、こうだと込めつけたりすることなく、余計なベールいっさいかけずありのままを見せたいと思っていたが、同時に彼を、一個人としての枠を超えて、物語を語る上での媒体として使いたいと思っていたのだ。」
      無上の喜びを追求せよ
       だがそれには
    悪夢の中で生きる覚悟がいる
      BY マーク・レイ
音楽は俳優クリント・イーストウッドの息子、カイル・イーストウッドのニューヨークジャズがこの作品にぴったりの即興演奏で心地よいです。
それにしても・・・ニューヨークの光と影。モノが溢れた世の中、アメリカでは貧困が拡大し、1%の持てる富裕層とその他99%の階層との落差。現代のアメリカが抱える問題。とにかく映画の中のマーク・レイは多少の影も見せますが、幸せそうなのです。考えさせられたドキュメンタリー映画でした。
映画公式ホームページ

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