瑞浪芸術館

先日、岐阜県瑞浪の「瑞浪芸術館」に招かれお邪魔してまいりました。
江戸時代の茅葺民家を現代のセンスで移築し造られています。
設計は建築家の中村好文さん。温もりのある建築で知られる中村さんの作品は私の住む街の”菜の花ギャラリー”でも出会っているので、その素晴らしさに思わず”素敵”とつぶやいておりました。
中村さんはおっしゃいます。「人ってなんだろう?人の暮らしってなんだろう?ってことを考えるのが建築家の仕事だと思うんです。ステータスシンボルとしての住宅にはあまり興味がない」と語っておられます。そうですね・・・よく分かります。
私も40年ほど前に築120年~150年の古民家を移築するにあたり、これからの新しい時代の人たちに心地よい家を、との思いで職人さんと一緒に家づくりをいたしました。萱・漆喰・鉄、この芸術館はNPOが運営し、参加型の芸術館として、公開講座やワークショップ、現代作家のコレクションギャラリーとして、またコンサートや様々なイベントも行われております。入り口には野の花が活けられ、その奥には大きな壷にススキが。昔の美しい日本とモダンなスペース、そのコントラストが素晴らしい空間を演出しています。


今回お招きをいただいたのは「森と日本人」がテーマです。
パンフレットには「古来より日本人は、神道・仏教・芸術において自然を神として崇め、あらゆる命の根源として森を大切にしてきました。森はあらゆる生物生存の元であります。今こそ、日本人の数千年来の森と共生する生き方を思い返す時なのです」と書かれています。
昨年は作家のC.W.二コルさんが基調講演をなさいました。彼は黒姫のアファンの森の再生に一生を捧げていらっしゃいます。私も何度もお邪魔いたしました。今年は6月に天皇・皇后両陛下が森をお訪ねになられました。
私は「箱根暮らし」をテーマに今まで出会った人、モノなどを話させていただきました。会場は60名が入ればぎっしり。地元はもとより名古屋からも大勢の方がお越しになられました。講演後はスタッフお手製のケーキとハーブティーで和やかなひとときを過ごしました。何だか・・・心があったかくなる時間の流れでした。
皆さま、素敵な出逢いをありがとうございました。


翌日は瑞浪芸術館の理事長であり陶芸家の近藤精宏さんのご案内で中山道を歩きました。日本橋から数えて四十七番目の宿「大湫(おおくて)」、奥深い山の中にひっそりと佇んでいます。
本陣跡、大杉、歌川広重が描いた二つ岩、古い格子戸の家並みが続き、往時の風情が伝わってきます。どの家の前の道路も綺麗に履かれていて清々しい気持ちになります。このようなところを外国の方々にも見せて差し上げたい・・・美しい日本をみていただきたいとも思いました。
半原の集落では「半原操り人形浄瑠璃保存会」の方々で郷土芸能として保存・受け継がれてきた岐阜県重要無形民族文化財の人形を拝見しました。300年の村民の思いが伝わります。日本を旅していると郷土に伝わる伝統芸能の「火を絶やしてはならない」という深い思いをしらされます。
この辺りは国道や鉄道など近代交通が発達しておらず、交通は不便な場所だから反面、この静かで落ち着いた街並みが今もこうした往時の姿を拝見できるのでしょう。
『美しい日本』をこれから私たちはどのように残していくことができるのでしょうか。
瑞浪から中央線に乗り名古屋へ、車窓からは刈られた田んぼ、はさ掛けされた稲、初秋の旅を終えて家路につきました。

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