『フェルメールに逢いたくて・・・デルフトの街へ』

私が始めてフェルメールの絵画に魅せられたのは10代の終わりのヨーロッパを旅したときでした。あれから半世紀以上も過ぎたのに、やはりフェルメールは心に寄り添ってくれている・・・そう感じ、このたび出版した「孤独って素敵なこと」の”終わりに”にも以下のようなことを書きました。
『フェルメールの朝を思わせる清浄な光。
何げない日常に注ぐ眼差しの温かさ。
それらの中にある美しさを、私はずっと求めてきたのだ・・・と。
そう気がついたとき、心がひたひたと感動で満たされていくのを感じました。
そして、私の前にまた一筋の光の道が見えたような気がしました。』
やはり・・・行きたい。
この目でフェルメールが暮らした街を歩き、光を浴び、その空気にふれてみたい・・・と、オランダ・デルフトに行ってまいりました。
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ヨハネス・フェルメールは1632年にデルフトで生まれ、1675年43歳の生涯をとじました。フェルメールの日記や手紙は全く残されていません。現在私たちが知っているのは、その他の記録と絵画からわかりうる事のみなのです。でもその絵画の中から当時の人々の暮らしが見えてきます。
航海術の発達にともなって、世界の海へと乗り出したオランダ。
17世紀は好奇心の時代。新発見と発明に満ちていました。交易により裕福な市民は世界から物を集め新しい世界観をもたらします。インド・トルコ・中国・日本・・・アジアからもたらされたスパイス、トルコの絨毯、日本や中国の陶磁器など等・・・。どれほど豊かだったことか。
フェルメールはそんな時代デルフトに生まれたのです。そして、生涯をデルフト・マルクト広場周辺で過ごします。
私が泊まったホテルは広場の前の新教会のすぐ裏にある中庭のある花に囲まれた小さなホテル。アットホームで親切なスタッフの人たちでした。教会との間には細い運河が流れ、フェルメールの「小路」にあるような建物が300年経た今でも同じように時を刻んでいます。
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フェルメールの絵をみると『気持ちが和らぐ』のはデルフトに来てみて分かりました。300年前とあまり変わらない人々の暮らしぶり。高層建築やネオンサインはあまり見えず、看板も目立ちません。絵に似たような風景がいまだに街中に残っているのには驚きました。
早朝、教会の鐘で目を覚まし、ホテルから歩いて2,3分のところにあるフェルメールの生家に行ってみました。(今はアンティークショップになっています)
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お父さんは織工、居酒屋・宿屋の主人、そして美術商でもあり当時の芸術家たちはその居酒屋・宿屋フライング・フォックス(空飛ぶ狐亭)の常連でフェルメールは、そうした芸術家たちの中で育ったのです。
そして、一生をデルフトで過ごしました。
生家のすぐ隣がギルド(組合)ハウス。フェルメールも同業者達とよく集まった場所です。現在はフェルメールセンターになっています。
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フェルメールが子供のころ走り回って遊んだであろう小路。また子供たち(11人)を連れて散歩したであろう道、教会、広場、市庁舎などがそのまま残っています。新教会はフェルメールが洗礼を受けた教会。
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そして、フェルメールのお墓がある旧教会へ。歩いても5,6分です。
まずは運河をはさんだ隣のプリンセスホフ博物館へ。何と幸運なのでしょうか・・・いつもはアムステルダムの美術館にある私の一番お気に入りの『小路』がデルフトに里帰りしていたのです。真近でみることができました!(フラッシュなしなら撮影可)。
この博物館は16世紀から19世紀のデルフト陶器やタイルが展示されていて素晴らしいのです。私は翌日この絵「小路」を描いたであろう場所にも行ってみました。諸説ありますが、一番新しい情報です。
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小さな運河を隔てたところに建つ旧教会。ステンドグラスからこぼれる光の中にフェルメールは眠っています。
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ひとり静かに自分と相対する時間です。
『孤独って素敵なこと』を書き終え、こうして旅に出て、背負ってきた荷を少しずつ降ろし、なんでもないフェルメールの日常に接して、そこに暮す人々に出逢えて・・・。
その日常がほんとうに愛おしくて。
それは、フェルメールが光によって私たちの目を導いてくれるからでしょうか。
やはり、先送りせず、行動してよかった。
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旅の最後はデルフトから30分ほどのハーグにある2014年にリニュアルオープンしたマウリッツハウス美術館で珠玉の作品「真珠の耳飾りの少女」(1665年頃)と「デルフトの眺望」(1660年~1661年)をゆっくり、じっくり時間をかけて観ました。
新しくなった美術館はシックな室内、木の階段・手すりが落ち着きます。至福のひと時でした。ハーグでのランチはコロッケ。そして食べてみたかった屋台で玉ねぎのみじん切りといっしょに”ニシン”。
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帰りは路面電車に乗りデルフトへと戻ってきました。
「デルフト眺望」を観たあとなので、描かれたと思われるスヒー運河の向こうに広がる光景がみたくて行きました。(夏の夕暮れ、7時過ぎに描かれたであろうといわれています)
遠くに新教会、街並み・・・その光景を目にやきつけ旅を終えました。
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今回の旅ではオランダに住む50年来の友人ご夫妻との再会は何よりも嬉しいことでした。友情に深く感謝する旅でもありました。

「『フェルメールに逢いたくて・・・デルフトの街へ』」への4件のフィードバック

  1. 浜美枝様
      デルフトへの旅、至福の時を過ごされたようで、何より事と思います。素敵な写真等で堪能させて頂きました。今頃、デルフトの街を歩かれて居る事でしょうと想像しながら、「孤独って素敵な事」読み終えました。孤独の先にこそある幸せ、それは、矢張り自分自身で心していく事なのですね。フエルメールの短い生涯、何百年経っても、魅せられて、その地に佇める事、素晴らしい事だと思いますて。
     浜さんの言われるように、思い、即行動出来る事、この年代ですからこそ、とても貴重な事と思います。
     5年前に、友人の娘さんが、ルクセンブルグで働いていましたので、訪ね、娘さんの運転で、ベルギー、アムステルダムと、思いがけない旅が出来ました。
     ゆっくりお休みされて居られるでしょうか。知らなかったデルフトの街を堪能させて頂きました。有り難うございます。
          追申  フエルメールのお父さんの宿、「空飛ぶ孤亭」
              いいですね、私は良く、空飛ぶ夢をみましたが、
             最近は、年齢と、重さの為か、見なくなりました。(笑)
                                      

  2. 郁代さん
    コメントありがとうございました。
    フェルメールの世界にどっぷり浸ってまいりました。
    「孤独って素敵なこと」を書き終え、私自身の中で
    何か、見えてきた光の中に身を置いてみたくなりました。
    17世紀、時を経てやはり人々が大切にしなければいけない
    暮らしを感じることができました。
    いつもお心のこもったコメント、有難うございます。
    浜美枝

  3. 浜美枝様
    もっともっと早く、感謝の気持ちをお伝えしたかったのに、筆不精のため⁉︎こんなにも遅くなってしまいましたこと、どうかお許しください。
    8月に箱根に寄せて頂いたときに、オランダ旅行を控えていた私に、デルフトの魅力を教えてくださいました。お陰でとても印象深い素敵な旅になりました。本当にありがとうございました。
    娘と一緒に、ハーグのマウリッツハイス美術館を堪能してから、トラムでデルフトに向かいました。タイムスリップしたような街並み、カリヨンの響き。忘れられません!パンケーキ屋さんもすぐ見つけることができました。毎日通われたという気持ちが分かりました!美味しかったです!
    旅の後、時々浜さんのブログにお邪魔して、追体験させていただいています。
    デルフトは、いつかまた訪れてみたい街になりました。

  4. 若林まゆみ様
    オランダ旅行楽しまれたご様子、よかったです。
    ハーグの美術館にもいらしたのですね。
    デルフトの街はきっと300年前とさほど変わらずに
    その静かな佇まいが残っていると思います。
    パンケーキも召し上がったとのこと、旅の思いでに残ったことでしょう。
    いつか、また訪ねてくださる機会があるといいですね。
    どうぞお元気で。
    浜 美枝

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