原節子さん

ノンフィクション作家の石井妙子さんが『原節子の真実』(新潮社)をお書きになられました。本の帯にこのように書かれています。
彼女が最も望んだのは何だったのか
その存在感と去り際、そして長き沈黙ゆえに生まれた数々の神話。埋もれた肉声を丹念に掘り起こし、ドイツや九州に痕跡を辿って浮かび上がったのは、若くして背負った「国民的女優」の名と激しく葛藤する姿だった。伝説や憶測に惑わされることなく、真実だけを積み重ねて甦らせた原節子の実像。
石井さんは、1969年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。白百合女子大学を卒業後、大学院修士課程終了。2006年、およそ5年の歳月を費やし、伝説の銀座マダムの生涯を浮き彫りにした「おそめ」が、新潮ドキュメント賞、講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞の最終候補作となりました。これまでの著書や共著に「日本の血脈」、「満映とわたし」などがあります。
原節子さんは私の憧れで、ちょうど私が女優になってすぐに砧の東宝撮影所で何度かお見かけしました。背筋を伸ばし、歩幅は大きく颯爽と撮影所の中を歩くお姿は大輪のバラの花のようでもあり、クレマチス、いえ楚々とした都忘れのようでもあり・・・15歳の私には眩しい存在でした。でも今回、石井さんの本を読みその時原さんは40歳。すでに引退を考えていらした時期だったのですね。
ラジオのゲストに石井さんをお招きし、原さんがどんなことで悩み、何を望んでいらしたのか・・・。じっくりお話を伺いました。石井さんは原さんのお誕生日には花束を持参し、手紙をそえて鎌倉のご自宅を何度もお訪ねになり、甥ごさんに手渡したそうです。そこでの暮らしは「原節子」ではなく「会田昌江」としての慎ましい暮らしだったようです。映画界を去ってから50年以上も沈黙を守り、その私生活は謎に包まれています。
去年9月、95歳で亡くなりましたが、石井さんも直接取材は叶わぬままでしたが、今回の本で、青春時代の戦争との関わりや、小津映画が代表作と言われることえの多少の不満。日独合作映画「新しき土」に出演した時の心模様。よくお調べになり、執筆にあたり、現存するすべての作品を観て、入手困難なものは市井の映画フアンの協力を得たそうです。当然原さんはご自分の本が出版されるのはご存知だったでしょう。恋愛についても私は納得できるものでした。
原節子さんは、「きっと喜ばれたと思います」・・・と思わず石井さんに申し上げてしまった私です。
私も演じる”女優”は40歳で卒業いたしました。
原さんは写真家の秋山庄太郎さんに「ことさら美しく撮ろうとしないでほしい。ありのままの私を撮ってほしい」と何度も念をおしたという。そこにも原節子の真実があるように思います。
ラジオをお聴きください。そして、「原節子の真実」をお読みいただきたいです。私自身、ようやく青春時代を過ごした映画界のことが分かったように思います。
文化放送 「浜 美枝のいつかあなたと」
放送日4月24日 日曜10時半~11時


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「原節子さん」への2件のフィードバック

  1. 浜美枝様
     新緑の候となりました。  冬の好きな私ですが、萩原朔太郎さんの
    「五月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする」をこの時期、正にその通りと思い、ゆっくり過ぎて欲しいといつも願っています。
     石井妙子さんの「おそめ」最近読み、飛行機マダムと言われた人が居たと知りました。政界、文壇の方達が行かれたとか。
     そして「原節子の真実」も読みたくなりました。いま、鎌倉の川喜多記念館で「映画女優 原節子「美しき微笑と佇まい、スクリーンに輝いた大スターを偲んで」を7月10日迄、展示されているようなので、来週友人と「フローラル」さんに行く事になっていますので、寄ってみたいと思います。 原さんの本は何冊か読みましたが、浜さんが感じられていたように,楚々とした中に自分の意志をしっかり持っていたよな、とても眩しい存在女優さんでした。
     今日のラジオは、外出の予定があり、録音出来ればと思っています。
      箱根の新緑は格別ですね。  映画、本、旅等、いつも元気を頂いています。有り難うございます。
                                         郁代

  2. 郁代さん
     ほんとうに新緑の美しい季節、先日若狭の家に行って
    まいりましたが、そろそろ田植えの時期、水面に浮かぶ山々が
    日本の美しさを実感できましたが、災害を思うとき、被災された
    方々の苦悩を考えます。
     鎌倉の川喜多記念館、先日私もフローラルの帰り道に寄って
    まいりました。「原節子の真実」を読んでおりましたので、尚更
    興味深く拝見いたしました。
    本、お薦めです。
    お元気で!
    浜 美枝

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