愛しき人生のつくりかた

映画「愛しき人生のつくりかた」
なんて優しくて、ウイットにとんだ映画なのでしょうか。
これぞフレンチ・コメディーですね。
パリで暮らす、ごく普通の家族、そして普通の暮らしのなかでの人間模様。
クリスマスを目前に最愛の夫に先立たれ、冒頭は葬儀のシーンから。モンマルトル墓地。この墓地には、小説家スタンダールや画家のドガ、多くの有名人が眠っています。そして、映画作家フランソワ・トリュフォーも眠っています。監督は「普通の人々の日常が私を魅了するのです」と語るジャン・ポール・ルーヴ(監督・脚本・(ホテルの主人役)主人公の祖母を演じるのは(マドレーヌ役)アニーコルディー。1928年、ベルギーのブリュッセル生まれ。ベルギー国王よりパロネス(女性版「男爵」)の称号を贈られています。
彼女は、ある日突然、姿を消してしまいます。親友のように仲の良い孫をマチュースピノジ(ロマン役)が演じています。彼はこう語っています。脚本のどこに惹かれましたか?
「普遍的なテーマの数々に感動しました。生、死、時間の流れの速さ、生命の危機、世代を超えた関係が描かれ、考察されています。それらは僕自身のことと響きあっています。台詞は軽快で可笑しくて、原作よりコミカルです。」と。
そのロマンの両親、退職したことを受け入れられず、自覚できない父。多くの女性が自己投影できるユーモアと感受性豊かな現代女性の母。夫婦の溝。そして再会。
フランス語の分からない私にはそのユーモアのニュアンスが分からず残念ですが、原題は「思い出」「記憶」「かたみ」」などとなっています。人生の哀しさや、理不尽さを主人公のマドレーヌは自分の望みを妨害されることには我慢ができなくなって自由を選び、少女時代の思い出の場所に旅に出ます。年をとったからといって、生きることをあきらめなければならないことはありません。フランス式の「家族の絆」とは日本とは少し違いますね。マドレーヌには3人の息子がいますが、息子たちは老婆(といっていいのかいら・・・)引き取ろうとはしませんし、彼女もそれを望みません。
この潔い生き方に共感できます。
振り返ると、私は人生の節目のときに、よくパリを歩きました。美しい街並み、美術館の数々。マルシェをのぞき食材を買い「暮らすように旅する」ことが最高の贅沢な時間です。そして、思うのです。日本人の慎ましさ、思いやりといった美徳だけでは通じない、個人主義の厳しさ。街ゆくひとがかもし出すぴりっとした雰囲気・・・。適度な緊張感。
この映画はまさにそうした家族のありよう、自分自身の生き方、家族の喪失を乗り越え、新たにつながる絆の予感を感じます。さわやかで温かさのこもる映画。孫が愛する祖母を捜しにノルマンディーへと向かいます。その美しい海辺の町、「エトルタ」その美しい風景に魅せられ画家モネ、クールベらが作品に残しています。
渋谷の文化村の”ル・シネマ”の午後の回で観て、そのままエレベータで地下に降り、吹き抜けになったテラスで白ワインを一杯飲み山に戻ってきました。
孤独って素敵なことですね。
映画の公式HP

「愛しき人生のつくりかた」への2件のフィードバック

  1. ご無沙汰しています。
    何かいい映画をと思っていた矢先でした
    11月に主人を亡くし、兄姉と続けてそんな年になったのですね
    先ほども図書館で本を借りてきました
    自由な時間が沢山出来、いいような何とも言えません
    明るく前向きがモット-ですので、いい刺激をいただいて人生楽しみます  何か内容的にぴったりのようなぜひ見に行きたいと思います
    見習ってワインなどもいただいてこようかしらねありがとうございます

  2. 中沢良子様
    ご無沙汰いたしております。
    梅の咲く季節になりましたね。
    白梅・紅梅と清らかな香りと気品のある梅の花。
    その美しさに心があらわれますね。
    良子さん  昨年はいろいろな別れがございましたね。
    さぞかしお寂しいことでしょう。でも前向きに生きる姿は素晴らしいです。
    人は、歳をかさねると別れが訪れますわね。
    映画、お薦めです。
    原作をお読みになってから・・・とのこと。
    より深く理解できるのではないでしょうか。
    そうそう、テラスでのワインもお薦めです。
    しばらくは映画の余韻浸れます。
    浜 美枝

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