映画「FOUJITA」

10年ぶりに小栗康平監督の最新作 「FOUJITA」が上映されます。
今から100年ほど前にフランスで活躍した画家・藤田嗣治、フジタが主人公です。
パリが愛した日本人、フジタ
エコール・ド・パリの寵児にして社交界の人気者だったフジタ
戦後の日本で”戦争協力画”を描いて日本美術界の重鎮にのぼりつめて行く
このように書かれています。
タイトルの『FOJITA』は、フジタのフランス語表記。
小栗康平監督は1945年生まれ。
1981年「泥の河」で監督デビュー。1984年の「伽倻子のために」、1990年の「死の棘」はいずれも海外で高い評価を受け、小栗監督の戦後3部作と位置づけられています。1996年には「眠る男」でモントリオール映画祭・審査員特別大賞を受賞。
その小栗監督の最新作は、画家・藤田嗣治の物語です。日本とフランスの合作です。大変興味があり封切は11月14日なのですが、事前の試写会で拝見いたしました。
私は一昨年、フジタが人に会うことを避け、パリ郊外のヴィリエ・ル・バクルで亡くなるまで過ごしたという家を訪ねました。小さな村の一瞬「これがフジタの家?」と思わせる質素でありながらも実にフジタらしい家。夫人と二人きりの隠遁生活で病に冒されたフジタはなぜかとても気になる画家でした。
梁の落書き、ミシン(このミシンが映画では象徴的に描かれています)、筆を洗うシンク、髭剃り用の鏡。すべてがフジタの手づくりなのです。
その画家・藤田嗣治を小栗監督はどのように描くのか・・・と大変興味がありました。
1920年にフジタがパリで「乳白色の裸婦」を日本画的な手法で描いて絶賛された一方、戦時下の日本でフジタは陰影の濃い西洋の歴史画のような絵を描きます。
フジタは”フーフー”というお調子者を意味する愛称で呼ばれ、夜毎にカフェ・ロトンドに繰り出しパリ時代だけでも三人の女性と結婚し、華やかな日々を過ごした画家です。
第二次世界大戦。1940年、フジタはパリがドイツ軍の手に落ちる寸前に帰国し、戦時の日本ではそれまでの裸婦とは異なる”戦争協力画”を描いていくのです。
そこにどのようなフジタの心の葛藤が内包されているのか・・・。
小栗監督はどのように描写するのか。
映画はある意味、そのような先入観念を裏切ります。
これまでの藤田嗣治のイメージとは異なる人物像が描かれ、従来の映像美をしのぐ美しさが全体に広がっています。隅々まで厳しく計算されつくされたワンショット、ワンショット。
『静謐で圧倒的に美しい。絵画と映画とが融合してフジタの知られざる世界が現出した。これはフジタのいわゆる伝記映画ではない』と書かれています。
正直最初は戸惑いました。
『これはやはり監督から直接お話を伺いたい!』そんな思いでラジオのゲストにお越しいただきました。
監督はおっしゃいます。
『フジタが生きた二つの時代、二つの文化の差異。パリの裸婦は日本画的といってよく、反対に日本での”戦争協力画”はベラスケス、ドラクロワなどを手本としてきた西洋クラシックの歴史画に近いものだ。これを、ねじれととるか、したたかさととるか。ともあれ、一人の人間が一心に生きようとした、その一つのものだったのか、を問いたい』と。
主演はオダギリジョー。
資料はざっと読み、早く事実から離れた。映画は独自の時間の中で成立するもの。物語は歴史に縛られがちだが、感情は歴史的事実からは自由であるもの。

そして合作ならではのご苦労や、逆に映画を国民的に文化と捉える風土。映画論。など等、大変興味深いお話が伺えました。
戦後70年という節目に上映されることについても伺いました。
封切は11月14日(土)から、角川シネマ有楽町や新宿武蔵野館はじめ、全国各地で上映されます。
ラジオ放送は
文化放送 11月8日 日曜日
「浜 美枝のいつかあなたと」
10時半~11時
ぜひお聴きください。
私は封切られたらもう一度、大きなスクリーンで愉しみます。
映画の公式サイト http://foujita.info/

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