パプーシャの黒い瞳

岩波ホールで観た映画『パプーシャの黒い瞳』(ポーランド)。
ロマの女性詩人・・・。放浪の民、ロマ族は文字を持たない民族です。迫害にあい悲劇的な人生を歩むのですが、この映画を観終わったときの感想をどう表現すればよいのでしょうか。モノクロームの映像は上空から幌馬車の隊列や、深い森を俯瞰で捉えていきます。”息をのむほどの美しさ”なんてことばで表してはいけないのでしょね・・・きっと。
実在の人物、ブロニスワヴァ・ヴァイス、愛称パプーシャの悲劇的な生涯が描かれています。
ロマ(ジプシー)の人々の世界を私はほとんど知りませんでした。大昔から迫害され続けている少数民族でロマ人は北インド出身で5世紀頃から放浪を始め、イラン、ピザンチン帝国を経て、ギリシャ、ヨーロッパで生活している人々。現在はほとんどが定住している。そして、優れた民族音楽の才能に秀でている。それくらいでしょうか、私の認識は。
今回この映画を見て初めてしりました。パプーシャの存在を。
解説
言葉を愛したがゆえに、一族の禁忌を破った女性がいた。書き文字を持たないジプシーの一族に生まれながら、幼い頃から、文学に惹かれ、言葉を愛し、こころの翼を広げ、詩を詠んだ少女ブロニスワヴァ・ヴァイス(1910-1987)。
愛称は”パプーシャ”
ジプシーの言葉で”人形”という意味だ。彼女は成長し、やがてジプシー女性として初めての「詩人」となる。しかし、その天賦の才能は、ジプシーの社会に様々な波紋を呼び、彼女の人生を大きく変えることになった。
映画では激動のポーランド現代史と、実在したジプシー女性詩人パプーシャの生涯が描かれる。
はじめは目まぐるしく変わる時代背景に戸惑いを覚えますが、それも、パプーシャの口からこぼれる詩に映画の中へ中へと惹き込まれていきます。
「いつだって飢えて いつだって貧しくて
旅する道は 悲しみに満ちている
とがった石ころが はだしの足を刺す
弾が飛び交い 耳元を銃声がかすめる
すべてのジプシーよ 私のもとおいで
走っておいで 大きな焚き火が輝く森へ
すべてのものに 陽の光が降り注ぐ森へ
そして私の歌を歌おう  
あらゆる場所から ジプシーが集まってくる
私の言葉を聴き 私の言葉にこたえるために」
「父なる森よ 大いなる森よ
私を憐れみ 子宮を塞いでください」
15歳で結婚したパプーシャは夫を拒んだ。
絵画のように美しい映像。 民族音楽の旋律に・・・「終わらないで、もう少し観させて」と心の中でつぶやいていた私。
監督はポーランドを代表する映画監督で、これまで発表した映画全て国際映画祭で受賞している。今回は妻のヨハンナ・コス・クラウゼと共同で脚本・監督を務めた。彼女は昨年12月に61歳で亡くなりこれが遺作となりました。
監督がこのような言葉を残しています。
「この映画は伝記的作品ではありません。社会政治的な映画でも、民族学的な野心を持った映画でもありません。私たちは、創造することの勇気について、それに伴う孤独と痛みについて、さらに報われない愛情について、そして、人間の幸福について描いたのです」と。
ラストシーンは、幌馬車での一行の果てしない静かな歩み、最後の歌。モノクロームの美しい・美しいロングショットの映像。
しばらく席を立つことができませんでした。
あえて私は”ジプシー”と書きました。
現在も世界を震撼とさせている出来事が続き、流浪の民が生まれています。
“ことば”のもつ意味を、偏見について、考えさせられた映画でした。
☆1回目の(11時)上映も満席にちかかったです。
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