音威子府そして中頓別町へ

音威子府・・・と書いて「オトイネップ」と発音するその村の語源はやはりアイヌ語からきているのでしょうか。
旭川から宗谷本線の列車に乗り北上していきます。
アナウンスがかかり「途中野生の蝦夷シカが飛び出し、急ブレーキがかかることもありますからご注意ください」・・・と。
いいな~こういう旅って。
北海道の北の果て、そんな慣れない呼び名の森林の村。
人口826人の村。
列車は天塩川に沿って走ります。
一度は訪れたかった村です。


そう、この森林の村で、森の風倒木や海に流れ着いた流木を使って木の彫刻を続けている芸術家がいることを、しかもその人がイギリス人であることを、私はまったくしりませんでした。 衝撃的な出会いはいつもそんな風に、あの日鎌倉に吹いていた心地よい初夏の風のように、さり気なく、そして思いがけなく訪れるようです。
真っ白な雪の上で朽ちた木が赤々と燃える色彩のコントラスト。
積み重ねた流氷の炉の中で威勢よく炎をあげる立枯れた木々。そして、ナラやニレ、ダテカンパなどの風倒木を彫って作った数々の造形物・・・。
その鎌倉の展覧会で見たデビット・ナッシュの芸術世界は、木を素材に選び、自然界を制作の場に選びながら決してありきたりな自然主義者としては片づけられない、ダイナミックな、まさに人の心を魅きつけずにはおかないものでした。
英国はウエールズ地方の鉱山の町に生まれ育ったというナッシュ。
彼が日本の自然に魅せられて、音威子府の森を創作現場に選んだのは単なる思いつきではないようです。その地に生きる村人たちと深い交流を重ねながら、枯れ木や流木や風倒木といった死に行く木々に、新たな生命力を与え続けたナッシュの芸術世界。
鎌倉近代美術館でそれを目の当たりにした私は、何故かいつまでもその場を立ち去ることができませんでした。そう・・・20年ほど前のことです。
音威子府・・・いつかは訪ねたいと思っていました。
今回はさらにその先にある魅力的な町、中頓別町(なかとんべつちょう)に招かれて伺いました。列車は音威子府で降り車で40分ほど走ると宗谷地方の南部に位置する開拓の町。8割が森林です。
町名の由来は、アイヌ語の「トー・ウン・ペッ」(湖からでる川)。
酪農の町でもあります。
人口1,911人。四方を山に囲まれ唯一海に面していない町です。


まず最初に迎えてくれたのは中頓別町で捕獲された大きな熊。
公民館には雪深い中、300名近い住民の方々が待っていてくださいました。


時には-37℃・・・などとニュースになる町でもあります。四季の自然の中で大地を耕しながら自分たちの暮らしの文化を大事に守り続ける人たち。
こういった町にお邪魔すると、拠って立つ所を見失いがちな都会に住む私たちよりも、豊かさの中に日本人の原点やアイデンティティを持っていらっしゃる・・・そう感じました。
帰り際、この会をお手伝いくださったお母さんたちと1時間ほどおしゃべりをさせて頂きました。手づくりのお新香や絞りたての牛乳、その牛乳で作った熱々のお豆腐のなんと美味しかったことか。


“ご馳走さまでした!”
またお会いしたいですね。

「音威子府そして中頓別町へ」への4件のフィードバック

  1.  先日、帰りの列車待ちで少しお話した地元民です。おつかれさまでした。
     その後も雪に埋もれる日々ですが、見慣れた景色も違うものに見えるお写真ですね。
     冬は寒く夏は暑いところですが、またお越しくださいませ。

  2. 北あかりさん
    ブログへのコメント、ありがとうございました。
    あの日は札幌までいらしたのですよね。
    旅って、あのように見知らぬ土地で見知らぬ方から
    お声をかけていただく幸せ・・・嬉しいです。
    北の雪国で女性たちが輝いていらしたこと、長い冬を
    皆さん力を合わせ豊かに暮らしておられること
    羨ましく感じました。どうぞ、お体くれぐれもお大切に。
    浜美枝

  3. おはようございます。
    昨日、27日木曜に梅田大丸で浜美枝さんをお見かけいたしました。
    たまたま横で服を見ていた者です。
    素敵な方だな・・・と思ったらナント浜美枝さんでした。
    お声をかけずに帰って来たこと後悔しております。
    関西にお住まいではないご様子。
    せっかくの偶然を生かせず本当に残念です。
    もしもう一度お会いすることができたならためらわずお声かけさせて頂きますね。
    益々のご活躍を

  4. 浦 みどりさま
    そうですか、梅田大丸でお会いしたのですね。
    大阪は4年間「近畿大学」で客員教授として通いました。
    3月22日が卒業式です。大阪に行った時は時々、
    大丸でぶらっといたします。おれも”ご縁”ですね。
    次回お目にかかれたらお声をかけてくださいね。
    春まであと一息。御自愛くださいませ。
    浜美枝

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