浜美枝のいつかあなたと~一志治夫さん

鎮守の森で津波を防ぐ
  4000万本の木を植えた男、84歳
宮脇昭先生にお会いしたのは、10年ほど前でしょうか。
森づくりの熱い思いを語ってくださいました。
照葉樹林域で日本の森を回復したい!と。
ノンフィクション作家、一志治夫さんのご著書を読み宮脇先生の業績、想いがよく分かりました。ラジオのゲストにお招きし、じっくり語っていただきました。
一志さんは1956年、長野県松本市生まれ。
1994年、当時サッカー日本代表だった都並敏史さんを描いた
狂気の左サイドバック」で第1回小学館ノンフィクション大賞を受賞。
たったひとりのワールドカップ―三浦知良、1700日の闘い
小沢征爾サイトウ・キネン・オーケストラ欧州を行く
など数々の作品があります。
この度、4000万本の木を植えている植物学者・宮脇昭さんを描いた
宮脇昭、果てなき闘い 魂の森を行け─新版─』(集英社インターナショナル)
を上梓。
これまで、その道の第一人者をはじめ、高い志で仕事に邁進する人物を取材してきた一志さん。
宮脇さんは麦わら帽子をかぶり「とことん現場の人」です。
「目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って調べろ」と書かれています。
横浜国立大学から本場ドイツへの留学。
「日本植生誌」を完成させ、環境保全林へと向かいます。
以前お目にかかった時も
「浜さん、このままでは鎮守の森が消えていってしまいますよ」と語られました。
宮脇さんの願いは、失われていった照葉樹林(タブノキ、シイノキ、カシノキ)など高木がある森を少しでも回復させたいのだと一志さんはおっしゃいます。
本物とは厳しい環境に耐えて長持ちするもの。
人間が本当の英知を持っているなら、その欲望の極限より、少し手前でおしとどめるべきである・・・など宮脇さんから聞いたそうです。
『環境問題はひとつのことでは解決しない。みんなが少しずつ我慢する、それしかない』
「東日本大震災復興構想会議」で「森の防潮提」構想を立ち上げます。
様々な困難の末です。高木は5、60メートルもあります。スギ、マツ、ヒノキ、カラマツなど植林がはじまり、日本の山林は大きく変化しきたわけです。
「いま処理に困っている瓦礫を土台に入れて、その上に土地本来の樹木で森をつくる。もし、そんな防潮林提があったらなら、かなりの命も流されないですんだはずだ。いまからでもそれをやるべきだろう」と本の中で宮脇さんは語っています。
そうですよね。
瓦礫・・・とひと言ではかたずけられません。
家財道具であり、一つひとつに深い想いがこもっているのですから。
財団「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」は2012年5月25日、正式に発足しました。
一志さんの本の最後に
『宮脇昭はいま、命を賭(と)して、最後の闘いを継続している。』と。
詳しくはぜひ放送をお聴きください。
文化放送「浜 美枝のいつかあなたと」(日曜10時半~11時)
1月27日放送です。