私の休日

昔、女優だった頃、夜のふけるのも忘れて映画論をたたかわせた青春。
芸術論を交わした仲間達も、皆んな60代、70代。
若かった私に映画の面白さを熱い言葉で語ってくれました。
10代の終わり東宝のスタッフとジャン=リュック・ゴダール監督を我が家にお迎えし、フランス映画の真髄を聞かせていただいたこと・・・走馬灯のように思い出されます。
『映画が好き』・・・な私。
40歳で演ずることを卒業しても映画を観るのは人生の最大の喜びです。
先日、東京に映画を観に行きました。
そんな日は映画鑑賞のかけもち。
2本、いえ時には3本という日もあります。
朝一番で観た映画『最強のふたり
2011年11月、フランスで公開された映画がいきなり年間興収第1位に躍りでたそうです。分かります。誰もが愛さずにはいられない映画。実話に基づいた物語です。
スラム街出身で無職の黒人青年ドリスとパリの邸宅に住む大富豪の身体障害者・フィリップ。フリップを演じるフランソワ・クリュゼはパリ出身の1955年生まれ。
事故で首から下がまひした傲慢な大富豪と、これまた働く気などさらさらなく失業手当てを受けるのが狙いだった黒人青年ドリス。
ドリス演じるオマール・シーは1978年生まれでフランスはイヴリーヌの出身。コメディアンとして活躍する彼の演技がそれはそれは魅力的です。
相容れない二人がお互いを認め合い本音で生きる姿は感動的です。
ユーモアに富んだ最強のふたり。
最強のふたりに訪れる突然の別れ・・・ですが、
後はあまりお話いたしませんね。
泣いて、笑って、そして、観客に生きることの素晴らしさ、パワーを与えてくれます。対等な人間として、強い絆で結ばれている『最強のふたり』。観終わったら何だか嬉しくなり映画館の近くの喫茶店に入り、余韻をかみしめました。
昼食をはさんで、歩いてもう一本の映画を観るために劇場へ。
あなたへ
高倉健さん205本目の映画。
半世紀にわたり観客を魅了し続けた俳優さんです。
私も一本だけご一緒させていただいたことがあります。
今でも初日の日のことが忘れられません。
東京駅八重洲口の近くにあった小さな旅館で支度をしていたら、廊下に座り「失礼致します」と仰る高倉健さん。ご挨拶くださったのです。
当時は五社協定があり私は東宝から東映の映画に出演させていただいたのです。そんな私にお気使いくださり恐縮致しました。その佇まいに謙虚で静謐な人間味あふれる俳優さん、そんな印象を受けました。
「あなたへ」は長年ご一緒に映画を撮ってきた降幡康男監督。
81歳の高倉健さん。
77歳の降幡監督。
長い間、友情と信頼と情熱で結ばれてきたお二人。
妻を亡くしその遺言に沿って、妻の故郷長崎へと車を走らせます。
道中でさまざまな人との出会い。
映像の美しさ、日本の景色の美しさを通して心のひだが描かれます。
家族や社会でのしがらみ・・・人は様々なことを背負って生きています。
放送作家の水野十六さんはおっしゃいます。
『独立一作目の「八甲田山」以降「あなたへ」に至るまでの35年間、真っ直ぐに貫かれてきたのは「人を想う心」。多くのものを捨ててきた高倉さんが選んだのは、この「心」だったのだ。』
年を重ね、孤独を知り、生きる辛さを知り、そして「人を想う心」の温もりを与えてくれた映画でした。

「私の休日」への2件のフィードバック

  1. ハッピー・フライデー!
    毎週、金曜日が楽しみです。
    美枝さんのブログの更新があるからです。
    映画《あなたへ》観たいなぁと思っていました。

  2. のかけらさん
    ブログをいつもお読みいただきありがとうございます。
    初めは日記がわりに・・・との思いで書き始めましたが
    自分の知らないこと、気がつかなかったこと、ブログを
    通して再確認している私です。
    「あなたへ」
    是非ご覧ください!
    浜 美枝

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