日本の戦前のジャズの世界を聴こう

先日、箱根やまぼうしで「戦前・戦中のジャズ研究家の毛利眞人さん」をゲストにお迎えして蓄音機で戦前のジャズを聴く会を開催いたしました。
初めて聴く蓄音機でのジャズ・・・音色は想像したよりもボリュームもあり澄んだ音でした。我が家の100年は越える木々も気持ち良さそうにスイングしています。

幕開けは大正時代とのこと。
日本のジャズの歴史は、なんと軍楽隊から始まったそうです。
ダンス音楽としてジャズが日本に流入し、その「新しい音楽」を演奏できる楽団は軍楽隊・・・というわけです。
毛利さんは1972年のお生まれ。
中学生のころからレコードのコレクションを始められ、現在は音楽に関する執筆をはじめ、とくに戦前のジャズ・ポップスに関して詳しい研究・執筆をされています。また1万枚のSPレコードを蒐集されています。
第二次世界大戦が終わったあと(昭和20年)、町にジャズがあふれた・・・ということは知っていましたが、大正時代、昭和の初期から戦争まで、いえ戦争中も、日本ではジャズはよく聴かれていたそうです。ジャズの香りがする音楽が映画館で演奏されていた・・・民衆の思いはたとえ戦時中でもかわらなかったのですね。
当時マニラは東洋のアメリカと呼ばれるほど洗練された街、日本人にジャズを親しく教えたのはフィリピンから来日していたジャズメンたち。
やがて日本でもジャズ・コンサートを開くジャズバンドも現れ、ラジオからも最先端の音色が流れます。特に唄入りのジャズを日本語に訳詞した「ジャズソング」が爆発的に流行したそうです。
「アラビアの唄」を蓄音機を通して聴きました。(昭和3年9月13日録音)
二村定一・日本ビクター・ジャパン。
このレコードから日本のジャズソングがはじまります。
毛利さんが時々クランク(ハンドル)をまわします。
リズムを取りながら・・・。
“ジャズってこういうものなのだ!懐かしい!”と思わず身を乗り出してしまいます。お客さまの年齢もさまざま。皆さんからだで、足でリズムをとっています。窓からは深い新緑が風になびき心地よいこと。
初期のジャズソングは浅草オペラの流れを引き継いだ声楽的な歌い方でしたが、昭和7年にサンフランシスコ生まれの日系二世歌手・山畑文子が来日したのをきっかけに、本場アメリカの雰囲気を漂わせた日系シンガーが続々と日本で活動し始めます。
チャップリンのモダンタイムの中から、「川畑文子のティティナ」
ベティー稲田の「懐かしのホノルル」
森山久の「南米の伊達男」
昭和10年代は戦前のジャズ黄金時代。
服部良一や仁木他喜雄といったすぐれたジャズ・アレンジャーが育ち、日本人のジャズ・フィーリングも飛躍的に進歩した・・・と毛利さんはおっしゃいます。そして戦時中はアメリカ映画は禁止されますが、ジャズの人気は盛り上がり、なんと・・・「日の丸数え歌」として戦争をジャズに!には驚きです。
笠置シズコさんの「ペニイ・セレナーデ」(昭和15年3月19日録音)
民謡にみせかけて実はジャズの 「草津節」
このころは役人とジャズマンたちが「知恵比べ」をしていたのでしょうか?
おおっぴらには演奏することは禁止されていたのですから。
毛利さんは当時の資料が少ないため古本屋や当時の新聞を調べたり・・・と大変だったようです。私は普段はCDでジャズを聴きますが、蓄音機から流れてくるレコードの演奏に何だかとても幸せなときを過ごせました。
ぜひ、次回は戦後のジャズも”蓄音機”で聴きたいです。

「日本の戦前のジャズの世界を聴こう」への2件のフィードバック

  1. ジャズのこと知らなくって参加して、反って良かったような気がしました。
    今まで聴いていたのは一体何だったのか?と錯覚しました。
    芦ノ湖畔からそんなに離れていないのに
    それを忘れさせてくれるような、《やまぼうし》
    それが好きで、再びお邪魔しました。
    今回は、憧れの浜さんの素敵な笑顔で迎えて頂け
    久しぶりに《感動》!!!
    あんなに自分の気持ちを素直にさらけ出せたことってあったかしら?
    時々、東京の友だちに会いに行くのですが
    やまぼうしでのイベントがある日に合わせて行こうと思っています。
    こんな《しあわせ》ってあるのですね
    ありがとうございました。
    小林圭子

  2. 小林圭子さま
    先日は箱根までお越しくださりありがとうございました。
    「蓄音機で聴くジャズ」素敵でしたね。
    圭子さんはじめ、皆さまと同じ空間の中でのひととき。
    とても幸せ気分!でした。
    若い頃にジャズ喫茶で聴いたのと、年を重ねて
    この年齢になって聴くのとは違いますね。
    箱根は、やまぼうし・箱根バラが満開の季節です。
    四季折々の花が楽しめます。
    どうぞまたお遊びにおいでくださいませ。
                              
    浜 美枝

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