地域活性化に向けた食と農のあり方

先日、山口県周南市で第23回全国農村アメニティー・シンポジウムが開催されました。私は『土地ごとの暮らしと知恵を見直して』と題してお話をさせて頂きました。その後はシンポジウムにも参加いたしました。
ふれあいセンターに着くと、地元のお母さんたちが温かく迎えてくださり、彼女たちの手づくりの美味しい料理の数々が並び「浜さ~ん!久しぶり!」と声をかけられ嬉しかったです。

この20年近く、私は地域で活躍する農村の女性達を応援してまいりました。私の役割は、生産者である農山漁村の人々に「がんばってください!」とエールを送ることであり、また消費者である都会の人々とのパイプ役になることだと思っております。
「食は命」であり、暮らしの原点であり、文化です。
女性はその担い手であり、守り手といえるのではないでしょうか。
日本のさまざまな場所で女性たちが、それぞれひたむきに活動してきました。
郷土料理の復活、地域の食材を子供たちの給食へ、老人センターや地域の病院から委託を受け、加工品を納入したり、また都市との交流・活性化にむけファーマーズ・マーケット運営など20年前には考えられないほどです。
女性の繋がりは縦ではなく、横の関係です。
「この指とまれ!」方式です。
「こう思うのだけれど」
「それ、いいわね」
「こっちはどう?」
平等な位置関係で思い思いに話しを進めていきます。
けっして声高に語られることはありません。
自然と向き合いながら、彼女たちは作るものに惜しげもなく手間ひまをかけます。無理に背伸びをしない、身の丈にあった等身大の活動です。だから私は尊敬できるのです。
私たちにとって、もっとも大切な「食」が、今、揺れています。
TPPはどのような方向に行くのでしょうか。
30年、50年先、いえ100年先を見すえて議論してほしいと思います。


今回のテーマである『土地ごとの暮らしと知恵を見直して』という観点で考えると、村おこし、町おこし運動は、上の人から押し付けられるものではなく、その村、町が再生するための「宝」は人、風景、事象も含めて今自分たちの暮らしているその「場」にあると思います。
自分達の生まれ育った地域を深く愛し、「この村、町を滅ぼさせない」・・・という強い目的があれば必ずその「宝」は見つけられると思っています。そんな話をさせて頂き、素晴らしい町づくりをしてきた全国10ヶ所を、写真をお見せしながらご紹介しました。

最後にご紹介したところは福島県飯館(いいたて)村でした。
この村は「魅力ある人が行う農業は、魅力ある農業を育む」という信念のもと、他とは違う快適な農村環境の中で「愛情」と「信頼」で結ばれ、活力ある村づくりを長年なさっていらした村です。私は何度もお訪ねしました。
ご承知のように東日本を襲った最大の地震。
そして、福島第一原発事故で、村が計画的避難区域に指定されました。地域共同体は今もしっかり生きていますが、故郷を離れざるを得ない村民の方々の現実。かけがえのない多くの人命と営々と築きあげた暮らしが一瞬にして失われ、数十万もの人々が被災しました。今までのご苦労を思う時、胸がはりさけそうになります。
今回のシンポジウムでは山口からの発信として素晴らしい活動をしている周南市の事例も伺い、改めて「食・農」のあり方を考えました。
「美しい日本の暮らし」を求め、私の旅は続きます。