美しい棚田

すり鉢状に広がる棚田。山口県周南市中須北集落にお邪魔してきました。
5集落全住民を会員として「棚田清流の会」が平成13年に発足し、
“やすらぎの里づくり~くらしがいをみつけられる郷へ~”を実践しています。
「なんて美しい棚田なの」・・・と思わず声がでました。
村の方が「ここは基盤整備していない自然の棚田ですよ」と教えてくださいました。先人のご苦労がしのばれます。
この美しい集落は農林水産省と農村開発企画委員会主催のコンテストで選ばれ、我々も現地調査でお訪ねしました。「美の里づくりコンクール」以前の「農村アメニティーコンクール」をあわせると今年で26年目を迎えます。私は1回目からの審査員をおおせつかっておりますから、随分と全国の農山漁村をお訪ねしていることになります。
標高300メートルの中山間盆地。
5つの集落は、幾重にも広がる田んぼで結ばれています。
「ご先祖さんから受け継いだすり鉢の米づくり、不便と言やぁ不便だが昔しゃこれが当たり前。米が実のりゃ苦労も癒える。うまい飯にゃぁ幸せ宿る」・・・と。住民の暮らしや農地を自らの手で守る、つまり自主活動なのです。
「中須の棚田自然米」のファンが増えているそうです。米の名前は中須にひっかけて「泣かす米」だそうです。なかなかウイットがあり素敵です。
都市交流やオーナー制度も導入されています。「若手が(といっても50代・60代)生産グループに加入し世代交代が円滑に進んでいますよ」とおっしゃるリーダーの佐伯伴章さん(51)の本業は獣医。兼業農家です。「コミニケーションを大切にしよう、自分達もやればできる!という自信ももてました」と佐伯さんはおっしゃいます。
お昼ごはんは全て村のおばあちゃんたちの手づくりです。「このこんにゃくも豆腐も、しいたけも野菜もぜん~ぶ、味噌も私らが作ったんよ。食べてみて、美味しいよ!自給自足だね。なんも買ってないよ」と元気よく笑顔でおっしゃいます。
地域の絆が深い集落です。
しかし、全国各地過疎化・高齢化が進む中、「私らは生涯現役」と話してくれたおばあちゃんは82歳。
神事を大切にし、美しい黒石川の清流を守り、棚田を守る。田植えの頃の満々と水をたたえた水田は古来日本の原風景として日本人の心に刻まれてきました。
「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」が盛んに議論されています。工業と農業がお互いに対立ではなく共存し、支えあっていくことは不可能なのでしょうか。
米を食糧、とだけ捕らえていいのでしょうか。
日本の食糧の安全保障はどうなるのでしょうか。
さまざまな事を考えさせられた今回の中須北集落への旅でした。

この美しい棚田の風景がおさめられたポストカードは「棚田清流の会」を通じて販売されているそうです。ご興味のある方は周南市役所「いのち育む里づくり課」(0834-22-8245)までお問い合わせください。