日本酒で乾杯推進会議フォーラム

「乾杯の心・日本のかたち・日本の心」
先日、石毛直道代表(国立民族学博物館名誉教授)のもとフォーラムが開催され民族学者の神崎宣武さんのホスト、私は先生のアシスタントで参加させて頂きました。
「日本酒で乾杯推進会議」100人委員会には各界の方々がご参加なさっています。
昨年は歌舞伎俳優の中村富十郎さん・塩川正十郎さん、そして私がゲスト。今年は小笠原流三十一世家元 小笠原清忠さん、西舘好子さん、民族学者のクライナー・ヨーゼフさんがゲストとしてご参加くださいました。
この会から「日本酒からの手紙」というのがございます。
ニッポン人には日本が足りない、と言われています。
「和服をさりげなく着こなしてみたい」
「ほどよく美しい言葉で語りかけたい」
この国で育まれてきたよき日本文化の数々。私たちがほんの少し心がけるだけで、まだそれが取りもどせそうです。
日本酒を粋に飲んでみたいと思いませんか。
日本酒は、長い歴史の中でしなやかな感性とすぐれた技術で磨きあげられてきました。
甘くて辛い「妙味の酒」特定の料理を選ぶことなく、心身を癒し、ご縁をつなぎ、和(なごみ)に酔うお酒です。
あらたまった礼講からにぎやかな無礼講に移るとき、私たちは乾杯します。
「みなさまのご発展とご健勝を祈念して・・・」
何に向って祈るのでしょうか。カミ様?ホトケ様?ご先祖様?
ニッポン人の心の奥底に宿るものとふれあうとき、新たな力が生まれずはずです。
これからの人生をますます豊なものにするために・・・日本酒で乾杯!
そんな思いをこめての「乾杯の心・日本のかたち・日本のこころ」のフォーラムでした。

小笠原流家元からは椅子に座っての本来の座礼の作法を再現していただきました。今日的な乾杯は、明治期におけるイギリス海軍の影響を受けて習俗化したそうです。
「上野に於ける東郷大将歓迎会及小笠原流古式凱旋式の図」風俗画報第三二八号(明治三十八十一月号)「乾杯の文化史」神崎宣武より
このように見てみますと乾杯のかたちには世界中いろいろあり興味がわきます。
クライナーさんからは、ワイン文化圏とビール文化圏の違いなど。ビールグラスを掲げて、声高らかに、というのは学生達がグラスをギャチャンとぶつけながら・・・正式な作法とは違うもの。
「祈念して」という発声がきわめて日本的であること。当たり前に発していたことでも、ずいぶん違うのですね。
西舘さんには着物で乾杯の美しいかたちなど。
私たちはどういう乾杯の作法を伝えていくか、が昨年来の宿題でもありました。
会員の皆さまからのご意見ご提案もいただきました。
内館牧子さんは「乾杯は、おめでとう、うれしいの心、盃を高々と揚げようが目元までであろうが、揚げるという意識があれば常識的に形はたもたれるもの」
伏木亨さんは「参加者の健康や幸福のみを祈るのではなく、草木虫魚獣山川海すべてに捧げたい。その目線で乾杯!」
「祈念して」は「感謝して」「ありがとう」ととらえる方が多くいらっしゃいました。
ひとつの作法にまとめることはできませんけれど、やはり、目線で乾杯のかたちは、祈念なり感謝なりの心がこもった、しかも、美しくみえるのがいちばん素敵です。
鏡開きの音頭で会場の皆さまと乾杯!
日本人のもつ美しい、こうした文化は継承していきたいと願った一日でしたし、日本人であることに幸せを感じた一日でした。
輪島からはこの日のために素晴らしい漆器・お屠蘇の作品を仕上げていただきました。日本の工芸品の奥深さ、技に感激いたしました。